電験三種を目指している方へ。
本記事では、電験三種がどのような資格なのか、難易度、メリットについて解説しています。
また、2022年度からは試験制度の変更が予定されています。
これから受験を考えている人にとって、試験制度変更の内容は必ず知っておくべき情報なので、ぜひ参考にしてみてください。
【プロフィール】
この記事を書いている僕、くるむの自己紹介です。電験三種、電験二種ともに試験合格をしています。学生時代は決して勉強ができたわけではなく大学も留年経験あり。電気の勉強は社会人になってからコツコツと始めました。なにが言いたいのかと言うと、難関とされる電験ですが、要点を押さえ勉強をすれば、誰でも合格できるということです。
Contents
電験三種とは?
電験三種の概要
電験三種は、電気の資格『第三種電気主任技術者』を取得する為の試験であり、正式名称『第三種電気主任技術者試験』の略称になります。
今では電験三種=第三種電気主任技術者の資格、と、資格そのものを指すのが一般的です。
電験三種を簡単に説明すると、発電所や変電所、工場やビルなどの施設における電気設備の保守、監督に従事する為の国家資格になります。
電気関係の資格において非常に価値の高い国家資格になりますが、その理由の一つとして、電験が必置資格であるということでしょう。
この資格を持っているだけで、電気のスペシャリストとして扱われる他、電気事業法により必ず選任しなければならない、ということが国の法律に定められていること。
これが電験における最大の強みであり、魅力であると言えます。
電験の種類
電験は一種、二種、三種と三種類に分類されますが、高電圧の電気を使用する施設には、それぞれ受電電圧により電気主任技術者の免状を有したものを置かなくてはならない、と電気事業法により定められています。
下はそれぞれの電気主任技術者が保安監督できる電圧になります。
①電験三種 : 電圧50kV未満の事業用電気工作物
②電験二種 : 電圧170kV未満の事業用電気工作物
③電験一種 : すべての事業用電気工作物電気工作物
電気のことを知っている人であれば気付く方もいるかと思いますが、多くの工場、大型施設の受電電圧は、66kVになります。
となると、電験三種を持っていても意味ないじゃん!
そう思う方もいるかもしれませんが、ご安心ください。
電験二種は、第三種電気主任技術者の免状を交付されてから5年以上の実務経験を積むことで、認定を受けることができる制度があります。
そのため、電験三種の合格=電験二種の取得につながるということです。
試験概要
電験は例年8~9月頃に全国47都道府県で実施され、年一回の試験になります。
受験申し込みは5~6月頃になっており、インターネットより申し込みができます。
詳細は電気主任技術者の公式ホームページで確認できるので、そちらを参考にしてみてください。
電験三種の特徴の一つとして、受験するための資格が必要ないということがあげられます。
そのため、まったく電気関係に携わっていない人でも受験すること可能です。
電験一種と二種は二次試験があり、三種を含めいずれも一次試験はマークシート方式、二次試験は筆記試験です。
電験三種は一次試験のみ合格すれば免状の交付が可能になります。
電験三種の一次試験は、理論、電力、機械、法規の4科目に分かれており、そのすべてを合格することで、電験三種合格となります。
この4科目というのが厄介で、それぞれ1科目ごとの出題範囲がかなり膨大です。一度、参考書などを手に取ってもらえばわかると思いますが、えげつない範囲の広さです。
そう言った事情ももあることから、電験には科目合格という救済措置が用意されています。
科目合格というのは簡単に言うと、1年で全科目合格できなくても、3年かけて全部合格できれば免状だしますよー、という制度になります。
例えば1年目の試験で理論だけを合格した人は、2年目の試験では理論科目は免除され、3科目を受験します。
2年目で電力を合格した場合は、3年目には機械と法規のみになります。
しかし、科目免除は2年が最大となりますので、3年目で機械しか合格できなかった場合は、1年目で合格した理論が復活。
4年目には理論と法規を受験することになります。
つまり、3年間の間で4科目合格すれば、晴れて電験三種合格ということになるのです。
合格基準点は年により異なりますが、どの科目も6割を取れば合格となりますが、試験の難易度、その年の平均点により60点を下回ることも度々あります。
例年、難易度が高いとされる理論科目については、合格点が40点代という年もありました。
難易度、合格率
電験三種の過去5年間分の受験者数、および合格者数です。
年度 | 受験申込者 | 受験者 | 合格者 | 科目合格者 | 合格率 |
平成28年度 | 66,896 | 46,552 | 3,980 | 13,457 | 8.5% |
平成29年度 | 64,974 | 45,720 | 3,698 | 12,176 | 8.1% |
平成30年度 | 61,941 | 42,976 | 3,918 | 12,335 | 9.1% |
令和元年度 | 59,234 | 41,543 | 3,879 | 13,318 | 9.3% |
令和2年度 | 55,406 | 39,010 | 3,836 | 11,686 | 9.8% |
毎年受験申込者数は55,000人以上。実際の受験者数は40,000人前後になっています。
気になる合格者数ですが、過去5年間のうち、合格率が10%を超える年はありません。
文句なしに難易度が高い試験だと言えます。難関国家資格であると言われる所以は、この合格率からみてもわかると思います。
これだけでも心折れて諦めてしまう人も多いのですが、僕としては電験三種を目指す人の背中を押したいので、少し要因分析してみます。
見るべきポイントは科目合格者数になります。
令和2年度でいくと、科目合格者数の割合は受験者数に対して約3割。3人に1人は、最低でも1科目を合格していることになります。
また、表の一番右にある合格率、というのは、そのほとんどが科目合格を積み重ねて合格した人達です。
1年で4科目とって合格、という人はほとんどいないということです。
例えば令和2年度で、すでに3科目合格している人だけをピックアップすれば、合格率は約30%程度。
2科目合格している人だけであれば、11%程度というところです。
毎年合格率が10%を下回るカラクリとして、1科目も合格していない新規受験者や、受験資格がないということからなんとなく受験した人も含めた数字の為、コツコツ科目合格を積み上げていけば、誰にでも合格できる資格だと言えます。
資格メリット
さて、努力を積み上げて手に入れた電験三種。
この資格のメリットについて解説します。
結論から言えば、転職による年収アップも容易であり定年後にも職の困らない、さらには今後、増々需要が見込まれる資格になります。
電験合格後の転職については、過去記事にまとめているので参考にしてみてください。
たまに電験三種をとっても意味がない、とか言っている人や、その手の記事を見かけますが、嘘です。虚言です。幻想です。
間違いなく人生にとって意味のある、価値のある資格ですので、そんな戯言に騙されないようにしましょう。
電験三種の将来が明るいという主な理由は、以下の3点になります。
①必置資格であること
②電気主任技術者の人手不足
③太陽光などの再エネの拡大。
必置資格であること
世の中にはいろんな資格がありますが、資格価値を評価する判断基準の一つとして、必置資格であるかどうかということがあげられます。
必置資格とは、なにか事業を行う際に、それぞれの企業や業種、規模によって特定の資格保有者を置かなければいけないと法律で定めれている資格のことを言います。
冒頭でも説明した通り、電験は電気事業法という法律により、受電電圧に応じて電気主任技術者を置かなくてはなりません。
世の中にはいくつもの高圧受電をしている企業、工場、変電所、発電所、その他の施設がありますが、そのいずれにも電気主任技術者が選任されています。
選任しなくては事業を継続して行うことができないからです。
会社として成り立たなくなってしまうのです。
例えば、今現在で選任している電気主任技術者が定年を迎えれば後任者に引き継がなければいけませんし、仮に一人しかいない場合はその一人になにかがあったときには工場などを停止させなくてはいけません。
将来性も考えると、年代別で数人の電気主任技術者を置いておきたいというのが企業の本音になります。
これらの理由から電気主任技術者の求人はいつの時代も数多く掲載されており、一生職に困らない資格だと言われているのです。
電験主任技儒者の人手不足
電気主任技術者が必要なくなるときというのは、世の中から電気というのものが消え去ったときです。
世の中なにが起こるかわからないと言いますが、将来、身の回りから電気が必要なくなる時代がくると思いますか?
僕は思いませんし、そんな時代が将来訪れることはないでしょう。
電気というものがなくならない限り、電気主任技術者の仕事がなくなることはありません。
それどころか、今現在でも世の中の工場や施設の数は拡大を続けています。
電気は専門知識が問われると同時に、電験の難易度が高いこともあいまって、電気主任技術者の人手はいつだって不足しています。
このことから、将来性にも安定した資格であることがわかります。
太陽光などの再利用可能エネルギーの拡大。
電気の技術は拡大を続ける一方です。
太陽光などの再利用可能エネルギー拡大が進み、世界的に脱炭素に向けた行動が進められています。
余談になりますが、日本政府が公表した2030年度までのCO2の実質排出量削減目標は46%。2050年までに排出量0としています。
工場などに務めたことがない方はイメージしにくいかもしれませんが、大きな企業、工場では脱炭素に向けた取り組みの一つとして、『電化』が取り上げられています。
つまり、今までガスや蒸気を動力源といて動かしていたものを、電気化することによりトータルとしてCO2排出量を抑制しようとする動きです。
電化が進むに伴い、受電容量、変電所の容量拡大の必要がでてくる可能性も今後は非常に高く、このときにも電気のスペシャリストの知識が必要となります。
2050年までには実質CO2排出量0を目指すカーボンニュートラルの動きにより、今後はますます電気主任技術者の需要は高まる傾向にあると言えるでしょう。
2022年 試験制度変更の本当の意味
2022年より、電験三種の試験制度が変更となります。
これから受験する人にとって、必ず知っておくべき情報となります。
その内容の一つが、これまで年1回だった試験を、年2回に増やす、ということです。
それも、科目合格免除などの制度は変えずに、です。
また、受験日の選択が可能になったり、マークシート方式からCBT方式(テストセンターにて専用のパソコンから回答する方式)に代るかもしれないとのことです。
詳細については2021年度中に電気技術者試験センターが決定するということですが、試験回数の増加はほぼ確定的だそうです。
……控えめに言ってチャンスです。
電験三種も二種も既に試験合格済の僕からしたら、なにそれー! と言いたくなりますが、これから受験する人はせっかくなのでこのチャンスに乗っかりましょう。
3年で4科目合格すればいいわけですから、6回試験を受験して4科目を合格すればいいのです。
1回で1科目でもおつりがでます。
どうしてこのような試験制度変更に至ったのか、ここまで読んでくれた方ならばわかるはず。
これからの将来、ますます必要とされる電気主任技術者の数を増やしたい、ということです。
この時代の流れに乗らない手はありません。
ここでわざわざチャンス、と言っているのは、試験制度変更は、何度か行われる可能性がある、ということです。
とくに、ここまでの大幅改変は電験保持者を極端に増加させてしまう可能性もあり、すぐにもとの試験回数に戻る可能性も0ではないのです。
今現在で電験を目指している方もこれから目指そうと思っている方も、来年は必ず受験をするべきだと言えるでしょう。
最後に、電験を合格するために必要な教材のリンクを張っておきます。
完全マスター 電験三種受験テキスト 理論(改訂3版) [ 塩沢孝則 ]
完全マスター 電験三種受験テキスト 電力(改訂3版) [ 植地修也 ]
完全マスター 電験三種受験テキスト 機械(改訂3版) [ 伊佐治 圭介 ]
完全マスター 電験三種受験テキスト 法規(改訂4版) [ 重藤 貴也 ]
『完全マスター』は僕も使用した本の一つで、これさえ完璧に覚えれば合格はもう目の前だと言っても過言ではありません。
林先生じゃありませんが、いつ始める? 今でしょ! です。
勉強する順番ですが、間違いなく一番初めに”理論科目”を勉強するべきです。
なぜ理論から始めるべきなのかは、こちらの過去記事にまとめてありますので参考にしてみてください。
電気の仕事する人にとって、電験は人生を変える資格だと思っています。
それは、電験を持っていれば将来安定、ということももちろん理由の一つにありますが、電験を試験合格した! という達成感と、電験を合格できるだけの知識を身につけたんだ! という、確固たる自信がつきます。
はっきり言って、景色が変わります。
まわりからも一目置かれることは間違いありませんし、僕は今でもそのことでちやほやされています(笑)
何より、一つの会社に縛られることがなくなるという意味では、自由を得る為の資格とも言えます。
当ブログでは電験についての記事を数多く紹介していますので、そちらもぜひ覗いていってみてください。
電験三種に合格して、明るい未来を掴みましょう!